2008年5月19日月曜日

海と毒薬

「海と毒薬」をみた。


本当はなんか面白いものを見よう!と思ってすべらない話を見ようとしていたのですが、ちょうどレンタルされていて棚に向かって思わず「マジで!」と言ってしまいました(笑)なので、じゃあ何を見ようかな?とウロウロしていると気になったのがこの映画でした。手に取って見てみるとモノクロ映画で面白そうだけど…どうしよう?と悩みましたが、いろんな賞を受賞しているようなので、思いきってレンタルしてみました。


太平洋戦争終戦直後、米軍に取り調べられる若い医学生の勝呂。彼は戦争中に捕虜となった米兵の生体解剖に立ち合ったとして取り調べを受けていました。そして彼の口から、次第に信じられないような生体解剖の事実が明らかになっていく…


という話でとっても面白かったっというか怖かったです。人間の恐ろしさにゾクゾクしました。モノクロの病院ものの映画…となれば「白い巨塔」を思い出します。この映画も同じように死亡した医学部長の椅子を、主人公の勝呂たちが所属する第一外科の橋本教授と第二外科の権藤教授が争っていました。医学部長の椅子を手にいれるためには、みんなからの信頼を得ないといけないと考える橋本教授は結核で入院している前医学部長の姪の田部夫人のオペを早めることにしました。

そして田部夫人のオペの日がやってくるのですが…この手術シーンが凄いんです!昭和20年頃の話なので、手術道具がこれで手術するの?大工道具みたいなんですけど?って思うぐらい大きくてゴツいんです。酸素マスクは空気入れみたいだし、血圧は直接看護婦さんが図ってるので昔は大変だったんだなぁと驚きます。よく考えるとこの映画86年だから忠実に昔を再現しているなんて凄いね~って思ってたら手術している部分がめっっちゃリアルなんですけど!!人の体の中なんて解剖した事ないので見た事ないんですけど…映画でちょこっとあるかなぁ…とにかく最初は平気でしたけど、見ているうちにグロいので早く終わってほしいと思っていたら緊急事体発生!医者や看護婦の慌てっぷり、ドクドクと体の中から溢れてくる液体、患者の吐血(麻酔で眠っているのに!)地面に落とされる血まみれのガーゼ…なんという緊張感!
このオペで橋本教授の医学部長の夢は遠のき、何とかしようとした橋本教授、柴田助教授、浅井助手はB29爆撃機の捕虜8名の生体解剖を行う事にします。それを手伝う事になった勝呂と友人の戸田…
そして解剖の日。解剖の様子を見ようと数名の将校が立ちあう事になるのですが、みんな、どんなんかな~ってウキウキしてるんですよ!しかも食べようと…してるの?と知って、もうグラグラしてきました。この人達おかしいよ!なんでこんな笑っていられるの?今から生きてる人で実験して殺すんだよ?何とも思わないの?と自分が考えるように、怯えていたのは勝呂でした。承諾したのを後悔しますが、戸田に今さら遅い、どうにもならないと言われ、その後はずっと遠くから手術風景を見ているだけでした。

手術が終わりやっと手術室から出る事が出来てずっと悩み続ける勝呂。冷静に特に深く考えずあの場にいたら誰でもそうしただろう、こんな時代のせいだよ!これでたくさんの人の命が救えるんだから捕虜は殺したんじゃない、生かしたんだ!と言う戸田。自分はこの時代にいたわけじゃないので批判する事も擁護する事も出来ませんし、医学の発展のために何が必要かもわかりません。だけど、人の命を奪う権利は誰にもないんだと改めて思わされました。



主演の奥田瑛二さんはご本人もおっしゃる通り若くて可愛らしいです。現在の奥田さんしか知らない自分はきっと言われないと気づかないでしょうね。それぐらい印象が違います。
渡辺謙さんは若くて格好良くてビックリしました!気づかなかったけど、背が高いんですね~スラッとしてて白衣が似合う。今や良い人のイメージですが、個人的にはこんなギラギラしている方が好きでした。
この映画を見て最初に奥田さんと渡辺謙さんの若さにもびっくりしたんですが、田村さんと成田さん…老けましたね!
田村さんは格好良いですし、NHKの連ドラを見てたので知ってましたけど…成田さんはびっくりよ!(笑)声はそのままでしたけど、おぉ~!こうなりましたか…みたいな。。。兵隊やくざシリーズから一気に30年たちましたからね。っと話はそれましたが自分がとても印象に残ったのは田村さん演じる橋本教授です。無口なんですが手術シーンは迫力があって逆らえない空気がビシビシ伝わって見ている自分も緊張しました。だけど解剖が終わった後、1人で手術室にやってきて何かを見て悲しい顔をするシーンがあったのです。それで自分の中に少しずつたまったものが一気に高まって泣きそうになったんですよね。
そんな橋本を想いその気持ちだけで解剖を手伝った看護婦を演じる岸田今日子さんも素晴らしかったです。

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